Photo by Y.Ueno



ヨロン島は渡り鳥の島
飛び石状に連なる南西諸島の島々は、渡り鳥にとっ ては、羽を休め栄養を補給するのに都合がいい。

・・・だけじゃない。迷鳥と称される鳥たち、そして、そいつらとの出逢いを楽しみにしている、一部の人間にとっても、それなりに都合がいい。
台風や低気圧などで、洋上(太平洋や、東シナ海)から流されて来た「流れ鳥」。渡りの途中に、季節風や前線などの気象の影響で、通常の渡りのコースから大きく外れてしまった「迷い鳥」。気まぐれで、ちょっと寄ってみようか的な「自由鳥」。敢えて未知の世界を求めてやって来た「冒険鳥」。なんていうのもいるかも知れない。
与論島は、島が小さい分、こうした迷鳥や珍鳥が飛来したさいに、出会える可能性が高いから。

* 通常生息している地域や、渡りのコースから大きくはずれて、渡来した鳥を迷鳥という。


迷鳥 ・ 珍鳥 & 変な鳥(?)
与論島で確認された、迷鳥や記録の少ない鳥、ちょっと変わった鳥を集めてみました。

クロツラヘラサギ(トキ科)全長:73.5cm
数の少ない希少種。南西諸島では、冬鳥として少数越冬することがあるようですが、与論島では希に旅鳥として立ち寄る事がある。チュウサギほどの大きさで、嘴の先が平たい。最近では2009年10月に2羽飛来した。
オオミズナギドリ(ミズナギドリ科)全長:49cm、翼開長:122cm
海洋性の海鳥。日本近海の離島などで繁殖し本州以南の海上で見られる。
与論島では、普段見る事はないが、季節風の強い頃、ナイター証明等に惑わされて落鳥することがある。 歩行は苦手。
カワウ(ウ科)
全長:82cm
本州や九州で局地的に繁殖する。南西諸島では冬鳥として少数飛来する。
与論島では旅鳥として希に、海岸の岩場や、集水池で見かける事がある。近づくのが難しく、遠くからの観察になるので、よく似たウミウの可能性も。
ミゾゴイ(サギ科)
全長:49cm
夏鳥として本州〜九州に渡来、南部では越冬するものもある。 夜行性で人目につきにくい。
与論島では、11月〜12月頃に観察記録があり、旅鳥、または冬鳥として飛来していると思われる。
コウノトリ(コウノトリ科) 全長:112cm
翼開長:200cm
国の特別天然記念物。
以前は日本にも生息していたが、現在は冬の間大陸から少数渡来するだけの希少種。最近、各地で繁殖、再放鳥の試みがなされている。与論島では、過去2回の記録がある。
コハクチョウ
(ガンカモ科)
全長:120cm
冬鳥として本州以北に渡来する。
与論島では、2010年に成鳥2羽と若鳥1羽の計3羽の飛来が確認されている。成鳥は、全身が白色で、幼鳥は全体に灰色がかっている。写真は若鳥。
トビ(ワシタカ科)
全長:雄58.5cm
雌68.5cm
翼開長:157〜162cm
サシバより一回り大きい大型のタカ。九州以北で留鳥。冬鳥として南へ移動するのもいる。
与論島では、渡りの途中と思われるのが飛来する事があるが、希。
ノスリ(ワシタカ科)
全長:54cm
翼開長:122〜137cm
サシバより大きいタカ。四国から北海道で繁殖し、冬は全国的に見られる。
与論島では、渡りの時期に希に飛来する。越冬の記録はない
クイナ(クイナ科)
全長:29cm
本州北部から北海道で繁殖し、秋冬には本州中部以南の湿地に移動する。
与論島では、秋から冬にかけてごく希に、見る事がある。写真(上)は、夜、民家の窓ガラスにぶつかったのを保護したもの。その後放鳥。
レンカク(レンカク科)
全長:55cm
南方系の鳥で、全国でも希な迷鳥。 写真は2010年に撮影されたものだが、これを含めて与論島では2回しか記録がない珍しい鳥。
セグロアジサシ
(カモメ科)全長:40.5cm、翼開長:86cm
夏鳥として、小笠原諸島や、南部琉球の島々で繁殖する。与論島では、台風の後などに、他のアジサシ類に混じって波間を飛翔しているのを見る事がある。写真は、保護された若鳥と、海上を飛翔する若鳥。
ヨタカ(ヨタカ科)
全長:29cm
夏鳥として九州以北に渡来する。与論島では、渡りの時期に見る事がある。夜行性で、昼間は太い木の枝に平行に止まってじっとしているので目に付きにくい。突然目の前から飛び立って驚かされる事も。夜、飛び回って餌をとる。
アカヒゲ(ヒタキ科ツグミ亜科)
全長:14cm
屋久島以南の南西諸島に生息する。良く茂った薄暗い照葉樹林内に生息する。与論島では生息の確認はないが、家の中に飛び込んできたと、持ち込まれた事が複数回ある。近くの島から飛来したかも。
トラツグミ
(ヒタキ科ツグミ亜科)
全長:29.5cm
九州中部から北海道に生息。冬期には暖地に移動するものもある。
与論島では、冬に林縁の草地や農耕地でミミズなどを捕って入るのを見る事がある。
キクイタダキ(ヒタキ科ウグイス亜科)
全長:10cm
日本で最小の鳥。本州中部以北で繁殖し、冬は暖地へ移動する。
与論島では旅鳥として渡りの時期にごく希に、モクマオウ林内で見る事がある。
スズメ(ハタオリドリ科)
全長:14.5cm
全国的に、最も普通に見られる留鳥。与論島では1998年の記録が最後(写真下)。その後2009年11月に約10年ぶりに、渡りの途中と思われる数羽が確認された。2010年2月にも小さな群が確認された(写真上)が、渡去。
ホシムクドリ
(ムクドリ科)
全長:21cm
冬鳥又は旅鳥として九州以南に渡来するが数は少ない。
与論島では、渡りの時期に1〜2羽、またムクドリの群と一緒に行動しているのを見る事がある。
ハシブトガラス
(カラス科)
全長:56.5cm
全国的に最も普通に見られるカラス。与論島では、以前は希な迷鳥だったが、最近はわりと頻繁に見られるようになった。数羽程度が住み着いているかも知れない。 他の奄美、沖縄にはふつうに見られる。
バリケン(ガンカモ科)
全長:66〜88cm
中央アメリカから南アメリカに生息するノバリケンが家禽化されたもので、公園の池などにいる事が多い。
与論島でも集水地で見かける事がある。遠くへ飛ぶ事もあるので、飼い鳥が逃げ出したのかも。
ホロホロチョウ(キジ科)
全長:60cm
アフリカの草原地帯に分布している鳥。
飼い鳥として持ち込まれたものが、逃げ出したか、放鳥したのか、一時期、畑や草地で見る事があった。

ナベヅル(ツル科)全長:96.5cm
鹿児島県の出水平野が越冬地として有名だが、渡りの途中のものや、コースを外れたものが、希に別の地域に渡来する事があるそうです。 与論島にも希に飛来するようで、最近では2010年11月に観察された。
ンムリカイツブリ
(カイツブリ科)
全長:56cm
カイツブリ類では最も大きい。主に冬鳥として九州以北の湖沼、河口、内海等に渡来する。
与論島では、渡りの時期に内海に浮かんでいるのを見る事がある。頭上の冠羽が特徴。
カツオドリ(カツオドリ科)全長:73cm
翼開長:145cm
伊豆諸島、小笠原諸島、南部琉球など日本の南洋の離島で繁殖し、その周辺で生息する。
与論島では、台風の後など、希に海上の岩(ぱなり)の上に飛来する事がある。
コグンカンドリ
(グンカンドリ科)
全長:79cm
翼開長:180cm
南太平洋やインド洋に生息する大型の海洋性の鳥。 与論島では、台風の後や、時化が続いた後などに飛来する事がある。数日間滞在する事もある。

ムラサキサギ(サギ科)全長:78.5cm
南部琉球に生息し、他の地域では少なく、渡りの時期にまれに記録される。与論島では、秋から冬にかけて現れる事が多い。
ヒシクイ(ガンカモ科)
全長:85cm
冬鳥として本州を中心に渡来する。
与論島では希に飛来する事があるが記録は少ない。写真は、2007年3月に飛来したときに撮影された。
ウミアイサ(ガンカモ科)全長:55cm
主に冬鳥として九州以北に渡来する。
与論島では、渡りの時期に、内海に浮いているのを見る事があるが希。 「つっぱり頭」が特徴。
オジロワシ(ワシタカ科)全長:雄80cm、雌95cm翼開長:180〜230cm
翼を広げると2mを越える大きな鳥。主に冬鳥として北日本に飛来する。
与論島では希に、渡りの時期に、サシバの群に混じって帆翔しながら渡っていくのを見る事がある。
ハイイロチュウヒ(ワシタカ科)
全長:雄43cm 雌53cm 翼開長:98.5〜123.5cm
種名は不確かです。冬鳥として全国に飛来するが数は少ない。与論島では、チュウヒ類は希で確認もほとんど無い。マダラチュウヒの雄が一度確認されている。
シロハラクイナ(クイナ科)全長:32.5cm
九州南部〜沖縄に生息する。水田などの湿地周辺に生息する。
与論島では、春から初夏にかけて、田んぼ周辺や、集水地で見る事がある。希に海岸近くの道路で、出くわす事も。
アカエリヒレアシシギ
(ヒレアシシギ科)
全長:19cm
旅鳥として岸から遠く離れた海洋上に多数飛来する。時に海岸の近くや、水田、河川などに飛来する事がある。与論島では、渡りの時期に、海岸沿いの湿地や、集水池で希に見る事がある。

コミミズク(フクロウ科) 全長:35〜41cm
翼開長:94〜104cm
「小ミミズク」ではなく、「小耳ズク」。羽を広げるとサシバほどもある。昼間は草地で寝ていることが多く、夕方頃、ネズミ等の餌を探して飛び回る。与論島では渡りの時期に、開けた牧草地や畑周りで観る事がある。
サバクビタキ(ヒタキ科ヒタキ亜科)
全長:14.5cm
全国的に記録の少ない迷鳥。
与論島では、1981年1月と2月に渡来記録がある
クロウタドリ
(ヒタキ科ツグミ亜科)
全長:28cm
全国的に記録の少ない迷鳥。
与論島では春先の渡りの時期に観察例がある。近いところでは、2005年3月と、2007年2月に確認された。
オオルリ
(ヒタキ科ヒタキ亜科)
全長:16.5cm
夏鳥として九州以北に渡来する。南西諸島では旅鳥。
与論島ではほとんど記録はないが、弱っているのを見つけたと持ち込まれた事があった。渡りの途中立ち寄ったと思われる。
カラムクドリ
(ムクドリ科)
全長:19cm
全国的に、迷鳥または、希な旅鳥。
与論島では、渡りの時期に希に単独で、時にコムクドリの群に混じって見つかる事がある。
コクマルガラス
(カラス科)
全長:33cm
小型のカラスで、ハトぐらいの大きさ。冬鳥として主に九州に渡来するが、数は少ない。群れで行動する事が多い。与論島では、ごく希に単独で、休耕田や刈り取った後の牧草地で見かける事がある。
シマキンパラ
(カエデチョウ科)
全長:11cm
インド、中国、東南アジアに分布。飼い鳥として輸入したものが野生化している。沖縄では台湾から渡ってきた可能性もあるとか。
与論島では、2008年9月に20羽ほどの群れが観察されている。
その他
・マダラチュウヒ(ワシタカ科)全長:45cm
1982年6月雄1羽確認。
・オオコノハズク(フクロウ科)全長:24〜25cm
春〜初夏、夜中に鳴き声を聞く事がある。
・ヤマショウビン(カワセミ科)全長:27.5cm
4月〜6月頃、林縁で見る事がある。
・キガシラセキレイ(セキレイ科)全長:16.5cm
渡りの時期に希に見られる。
・ミソサザイ(ミソサザイ科)全長:10.5cm
1981年1月1羽確認。昔は時々庭先に現れたそう。
・キビタキ(ヒタキ亜科)全長:13.5cm
民家に飛び込んできたのを保護。

*写真は全て、与論島で撮影されたものです。
*種名には、やや不安なものがあります。手持ちの図鑑で、「それっぽーい!」、と思われる名前に、とりあえずしておきました。正確に知りたい方は、専門家にお聞きになるか、図書館等で調べてください。
(参考文献:フィールドガイド日本の野鳥。日本の野鳥。鳥630図鑑等)

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