Photo by Y.Ueno


(留鳥・夏鳥:ヨロン島で繁殖する鳥たち
ヨロン島で確認された野鳥は、およそ170種。 そのうち、一年を通して 島で暮らし繁殖する「留鳥」 は、16種(キジを含む)で10%にも満たない。少ないながらも愛すべきヨロン島の住人である留鳥たち、そして子育てのため渡ってくる「夏鳥」たちを紹介します。
留鳥(1年を通してヨロン島で見られる鳥たち)

キジバト (ハト科)全長33cm
島で、最も普通に見られるハト。羽の上面にうろこ状の模様があり、飛び立ったとき、尾羽の先に帯状の白い線が出るのが特徴で、他とハト類と見分けるときのポイントにななります

鳴き声は、クークーグッククー
島では古くから「シトゥトゥー・グイトゥー」と聞きなす。
ヨロン語では、カラパトゥヤマバトゥパトゥなど。

カラスバト (ハト科)全長40cm
常緑広葉樹のよく繁った林に住む全身黒っぽいハト。島で見られる3種類のハトなかではもっと大きい。大規模な伐採による森林の減少で、生息数が減っていて危険な状態にある野鳥の一つ。冬期に数が減る傾向があって、一部季節的な移動(渡り)があるのかも知れません。鳴き声は、ウッウー、ウー。飛び立つときに、ガラララーと鳴くこともある。
ヨロン語では、クルバトゥ

ズアカアオバト (ハト科)全長35cm
キジバトより少し大きい緑色のハト。嘴はコバルト色、胸には少し黄色みがあり、お尻から尾の下面にかけてうろこ模様がある。常緑広葉樹のよく繁った林に住み、木の実や草の種子を餌とする。カラスバト同様、生息数が減少しつつある鳥。鳴き声は尺八や笛のような声で、ピョーオー、ポーポーペポー
ヨロン語では、オーバトゥ

ツ ミ (ワシタカ科)全長 雄26cm、雌36cm
島で繁殖する唯一の猛禽。キジバトより少し小さい小型のタカで、島の食物連鎖の頂点に位置する鳥。ネズミなどの小型のほ乳類から、メジロ、セッカなどの小鳥類、バッタやトカゲといった昆虫や爬虫類等の小動物を捕って餌とする。営巣樹の減少と営巣環境の悪化にともなって繁殖数が減っていて、与論島で今、最も危険は状態(絶滅)にある鳥。繁殖期には、テリトリー内で、キーキーキキキと強い声で鳴く。
ヨロン語では、ピャンクサユムドゥイピャンクサ
など
リュウキュウツバメ (ツバメ科)全長13cm
与論島で、最も普通に見られる鳥の一つ。コンクリートやモルタルの建物の軒下に、土と草の茎を混て巣を作る。渡りの時期に見られるツバメより尾が短く、体も小さい。ツバメのお腹が白い(リュウキュウツバメは黒っぽい)も見分けるポイントになります。鳴き声は、ジュルルル、飛びながらチィーチィーと鳴く。ヨロン語では、ツバメ(総称)、マッタラケーシ
イソヒヨドリ (ヒタキ科)全長24cm
雄は上面が青藍色でお腹が赤褐色(写真左)雌は上面が暗黒褐色で下面が暗褐色にうろこ模様がある(写真右)。海岸の岩場に好んで棲息するが、街の中でもよく見かける。岩の上やアンテナの上で澄んだ声で、ツツピーコピーチュルルピーヨーとさえずる。
ヨロン語では、チグイバトゥハンシャギタ

メジロ(メジロ科)全長11.5cm
常緑広葉樹林に好んで棲む。樹木があれば人家の周辺でも見られる。
身体の上面が暗黄緑色でのどが黄色く目の周りが白い。与論島に生息しているのは亜種のリュウキュウメジロで、下面はほぼ全体が白いのが特徴。冬に本土から渡ってくるメジロは脇腹がブドウ色を帯びているので慣れれば見分けられます。木の実や花の蜜を好んで餌にする。夏には昆虫やクモなども餌にする。また秋から冬にかけては10羽〜30羽で行動する群れも見られる。囀りはチーチュルチーチュルチュルルチー、地鳴きはチー。
ヨロン語では、オームックイ
野鳥は、許可無く取ったり飼うことは法律で禁止されています。

ヒヨドリ(ヒヨドリ科)全長27.5cm
込み合った藪の中に好んで生息するが近くの電線や見晴らしのいい枝先に出てきて大きな声で鳴くこともある。
繁殖期は、バッタやカマキリなどの大型の昆虫が主な餌で、秋冬は、木の実や草の実、花の蜜などを好んで餌とする。与論島に生息しているのは亜種のアマミヒヨドリ(左)で、秋には本土に住むのヒヨドリが群れで渡ってくる。冬に群れでミカンや農作物を食い散らかすのは、ほとんどがこの渡ってきたヒヨドリたちの仕業です。渡ってくるヒヨドリはアマミヒヨドリに比べて灰色みが強く白っぽく見えます。鳴き声は、ピーッ、ピーヤ、ピーヤイヤイヨロン語では、ピュードゥイ

セッカ(ヒタキ科ウグイス亜科)全長12.5CM
夏を告げる鳥。繁殖期には、農耕地や草地の至る所で、さかんに囀りながら飛び回って、縄張り宣言をする。繁殖期を過ぎると、ほとんど鳴かず、草むらの中で行動するので、見つけにくい。上面は黄褐色に黒の縦斑。仮面は淡機褐色で尾の下面は黒と白の帯模様がある。夏の間、ヒッヒッヒッヒッと鳴きながら飛び回り、下降するときチャチャッチャチャッと鳴く
ヨロン語では、ギーキ
、以前はヒバリと呼ぶ人もいたようです(ヒバリは与論島には生息していません。渡りの時期にまれに見られることはあります
ウグイス(ヒタキ科ウグイス亜科)全長雄15.5cm、雌13.5cm
ササやススキの密生した藪に棲息し、
昆虫やクモを好んで餌とする。秋から冬にかけては、人家の庭にもよく出てくる。この時期は木の実もよく食べる。身体は茶褐色で、薄い眉斑があり、下面は淡色。囀りはホーホケキョ、地鳴きはチャッ、チャッ
ヨロン語では、マチキジマシキジ。以前はホーホケキョとなくのがウグイスで、庭先などに出てきてチャッ、チャッとなくのがマチキジ(マシキジ)と区別して呼んでいたようです。
ミフウズラ (ミフウズラ科)全長14cm
奄美大島以南の南西諸島に分布し、農耕地や草地の中を歩き回って棲息する。上面が褐色で黒い横斑、黒と淡黄色の縦斑がある。雌は喉が黒く、雄は雌より小さくて喉は白い。一妻多夫の習性で知られる。繁殖期、メスは産卵すると子育てをオスに任せて、また別のオスを捜して交尾して産卵する。鳴き声はブーブーヨロン語では、ウジラ

バ ン (クイナ科)全長32.5cm
水田や池などの水場周辺に棲息する。全身黒っぽい。額から嘴にかけて赤く、嘴の先は黄色。水面では脇腹の白い点線とお尻の白い三角が目立つ。若鳥は褐色で下面が白っぽい(写真下)年に2〜3回繁殖し、最初にかえった若鳥が、次回以降の雛を育てる手伝いをするヘルパーと呼ばれる習性があることが知られています。鳴き声は、クルルキャッという声も出す。ヨロン語では、ターグミル

ヒクイナ(クイナ科)全長23cm
水田や農耕地の周辺、草地などに生息する。上面は暗い緑褐色、下面は赤褐色。警戒心が強く、人の気配を感じるとすぐに草むらや藪の中に逃げ込んでしまう。早朝や夕方、数羽の子供を連れて畑やあぜ道を移動しているの見ることがある。昔はごく普通にいたそうですが、最近は年に1度か2度見つかるかどうか、という程度にまで減ってきています。鳴き声は、キョッ、キョッ、キョッ、キョッキョッ・・・、と初めは遅く次第に早くなる。ヨロン語では、フミルヤマグミル
クロサギ (サギ科)全長62.5cm
海岸の岩場や磯を主な生活の場とする。黒色型と白色型があり、黒色型は、ほぼ全身が黒く、白色型は全身が白い。嘴は黄色。近年急激に生息数が減少し、ツミ同様、与論島で最も危険な状況にある鳥。
鳴き声は、グヮー グヮー。
ヨロン語では、ホートゥイ
クロサギは番(つがい)の組み合わせによって、雛の組み合わせも変わってくるようです。一度におよそ3〜4羽の雛を育てますが、一つの巣に白と黒の雛が混ざっていることが多いようです。
左の写真は、黒で、雛は3羽とも白が出た例。の写真は、 親のう1羽は白、雛は黒が2羽、白が1羽の組み合わせ。( この家族では親は1羽しか確認できなかった)
シロチドリ (チドリ科)全長17cm
シギ、チドリの中で唯一、与論島で繁殖するチドリ。砂浜や磯など、海岸一帯をすみかとする。上面は灰褐色で下面は白い。最近の砂浜の縮小と、海岸沿いの人工物の増加が、繁殖数の減少につながっている。以前は二十番前後の繁殖が確認されていたが、最近では数番の確認がやっと、という状況にある。冬は北から渡って来たシロチドリと群れでいることがある。鳴き声は、ピュル、ピュル ヨロン語では、チジュイ、パマチジュイ(シギチドリの総称)
キジ(キジ科)全長 雄80cm、雌60cm
もともと与論島には生息していなかった鳥。放鳥されたのが増えて今では普通に見られる鳥の一つになっていてる。金属光沢のある黒っぽい色をしたのが雄。黄褐色に黒褐色の斑があるのが雌で、雄より少し小さい。鳴き声は、大きな声でケッケーッ、飛びながらケケッケケッ鳴くこともある。

与論島からいなくなった野鳥
スズメ(ハタオリドリ科)全長14.5cm
昔は人家周辺にはいくらでもいたが、二十年ほど前から急に数が減り、現在与論島には生息していない。1998年6月26日、茶花の事務所のある建物で2羽を確認したのが最後の記録(ヨロン野鳥友の会)。原因はよくわかっていない。いなくなる少し前まで「群れ」として生息していたのは、学校の鶏小屋と、当時数カ所あった養鶏場の周辺だけ。養鶏場が無くなって以後、「群れ」は見られなくなった。その後しばらくの間、
茶花の商店街の一部で少数生息していたが、1998年を最後に姿を消した。稲作の減少で数が減り、群れを維持する拠り所であった養鶏場が無くなったことも姿を消した要因の一つではないかという気がしている。鳴き声は、チュンチュンヨロン語では、ユムドゥイ

リュウキュウヨシゴイ(サギ科)全長40cm
雄の上面は赤褐色で、下面は薄くて1本の縦線がある。雌は赤みの少ない茶色で黄白色の斑点がある。下面は薄くて数本の縦線がある。渡りの時期に見られるヨシゴイ(写真右)より少し大きくて赤みが強い。昔は水田や池など湿地の周辺に普通に生息していたらしいが、ここ数年目撃情報さえ無い。ヨロン語では、ウィクドゥイ

*その他、
カワセミシロハラクイナ、なども留鳥として昔は繁殖していたようです。

夏鳥(繁殖のため渡ってくる野鳥)
エリグロアジサシ(カモメ科)全長30cm
初夏の頃に渡ってきて、海岸の岩場や離れ岩で集団で、または番単位で営巣する。全身白っぽく、目から後頭部にかけて黒い帯模様がある。
鳴き声は、ギューッギャッギャッヨロン語ではシーチャブ
サンコウチョウ(ヒタキ科)全長雄44.5cm、雌17.5cm
夏鳥として、よく茂った林に渡来する。4月から5月頃渡ってきて子育てをし、9月から10月頃南の方へ渡っていく。生息場所がよく茂った林で、ある程度の広さが必要なので、最近は渡来数が非常に少なくなった。雄は尾がとても長く身体の2倍ほどもある。お腹は白く、他は全体的に黒っぽく見える。雌は雄より尾が短く、上面は茶色っぽい。鳴き声は、
ギィーギィー囀りはフィーフィーホイホイホイ。ギーチーホイホイホイ。
アカショウビン(カワセミ科)全長27.5cm
夏鳥としてよく茂った林に渡来する。全身ほぼ赤褐色。開けた場所へ出てくることはほとんど無く姿を見る機会は少ない。早朝や夕方など大きな声で鳴く。林の中にある沢や湿地周辺でカニやカエル、トカゲなどの小動物を捕って食べる。サンコウチョウ同様、生息環境の減少で渡来数が減っている。鳴き声は、キョロロロロロ・・・ヨロン語では、アーガール
ゴイサギ幼鳥
ツバメ
その他
ベニアジサシ(カモメ科)全長31cm
繁殖期終盤、エリグロアジサシの群れに何羽か混じっていることが多く、同時期に繁殖している可能性があります。

ゴイサギ
(サギ科)全長58cm

秋から冬にかけて幼鳥や第1回冬羽と思われる若鳥が多く観察されていることから、少数が繁殖している可能性があります。


ツバメ(ツバメ科)全長17cm
主に渡りの時期に多く見られるが、少数が繁殖することもあるようです。

(参考文献:フィールドガイド日本の野鳥)



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