マイ・フィールドの住人たち


ツミの狩り

環境省が行っている「緑の国勢調査」に参加した。
今回は「身近な林」をテーマに、2000年9月から2001年8月まで、調査対象となる林を決めて、1年を通して、その植生や動植物の分布を調べようというもの。

ツミの狩り に遭遇したのは、その調査の最中だった。
期限も押し詰まった2001年8月、最後の調査を実施するために調査地へ向う。
林の前に着いて車を止めようとした時、片足を怪我したキジ がトコトコ車の前に出てきた。

どうしたんだろう、などと思いながら通り過ぎるのを待っていると、
突然背後から、小型の鳥がそのキジ に襲いかかった。間一髪のところで
キジ は草むらへ逃げ込んだ。襲った鳥は近くの松の枝に止まった。
双眼鏡を取り出して眺めるとそいつはツミ の若鳥だった。
自分の倍以上あるキジ を襲うとは、
なんて凄いヤツ。などと感心しながら眺めていた。

枝にとまったツミ は少しイラついているように見えた。
キジに逃げられたのが、よっぽど悔しかったのか。
なんとなく落ち着きが無い様に見えていたツミ
の動きが、一瞬止まった。次の瞬間、すごい勢いで数メートル離れた茂みに突っ込んでいった。
そして「
チーッ」という一声と共に、元の枝に戻ってきた。
片足にはしっかりとメジロ
が鷲掴みにされていた
メジロ は何度か羽根をばたばたさせていたが、すぐに動かなくなった。
カメラのレンズを望遠に変えて、時々シャッターを切りながら、観察する。ツミ は、時々まわりを気にしながら、丁寧に羽根や羽毛をむしり続けた。ファイダーの中で繰り広げられる一連の光景は、まるでテレビのドキュメンタリー番組を見ているかのよう。「
すごいすごい」と感心しつつ、「ふむふむ、そうかそうか、これが食物連鎖なのだ」などと勝手に納得する。

ツミ は与論島で繁殖する唯一の猛禽類であり、食物連鎖の頂点に位置する鳥。そんなツミ だからこそ、許される行為なのである。

そして、きれいに羽根をむしり取ると、林の中へ運んでいった。
その林の中からは、サンコウチョウ の声が聞こえてきた。
ツキヒーホシ(月日星)ホイホイホイ」。
お前も気をつけろよ」と、今起きたことを教えてあげたい。

この林には、ヒヨドリウグイス、それにカラスバトなんかもいて、面積は小さいが、それなりに生態系を維持しているのかな、と思ったり、ちょっと過密すぎないか?、と気になったり・・・、?あっ!、肝心の調査が・・・。

以前は、ツミ が狩りをするところをみるのは、そう珍しいことでは無かった。
ヨロン野鳥友の会 が、1987年に行った調査では、20ヶ所で、繁殖と営巣が確認できた。全島では数十番が繁殖していた可能性があった。
今年(2001年)、繁殖があったと推測されるのは数ヶ所にとどまっている。
それにしても、キジ 狩りに失敗し、しかもそれを人に見られてイラついている(?)ツミ の近くに、
たまたま居合わせたあのメジロ はとんだ災難だった
ちょっと・・・、いや、かなりかわいそう・・・、かも。
そう、メジロ はとてもかわいそうな鳥なのだ。
ツミに襲われ、ヘビに襲われ、鳥かごに入れられ、さらには密猟者にも・・・。

メジロを含め野鳥を許可無く飼育したり、捕獲することは、法律で禁止されています。
与論島でも鳥かごに入れて飼っている家が何件かあるようですが、速やかに野に返してあげてほしい。

野の鳥は野に。


トピックスへ