南十字星


南十字(みなみじゅうじ)Crux:Crucis:Cru [英]Cross

「与論島から、南十字星が見えるよ」
星空に魅入られ、こまかい星座を一つ一つ、星図と見比べながら確認していた遠〜い昔、南十字星も可能性があることを発見した。で、いてもたってもいられなくなって見に行った。

南中したころのカラス座から南に辿っていくとケンタウルス座があって、そのケンタウルス座のγ星とδ星の真ん中を更に水平線に向かって降りていくと南十字に辿り着く。

双眼鏡でゆっくり辿っていくと三角形に並んだ3つの星が視野に入った。 居たー!。南十字だ!。
その3つの星が南十字星のβ、γ、δ、だってことはすぐに分かった。

この辺りの星は、オメガ星団目当てで、何度も見に来ているので、ほとんどが馴染みのつもりだったんだけど、こんなところに南十字星がいたとは。ケンタウルス座の一部だと思って見過ごしていたのかも。

もともとケンタウルス座の一部だったのを、ロワーエとかいう人が「天の南極を示す指極星だから格上げすべきだ」つって、ケンタウルス座から分離して独立させたとか。
γ星からα星に向かって4倍ちょっと伸ばしたところが天の南極だそうです。

(約50mmで撮影) *写真上にカーソルを置くと星座線が表示されます。
南十字星は、主な4個の星で十字の形を作っている。そのうちの上の3つの星β、γ、δは、すぐに見つかる。条件がよければ肉眼でも楽に見ることができる。
でも、一番下のα星、アクルックスっていう1等星がなかなか確認できない。双眼鏡使っても、なんか見えているような、違うような、なんて調子。
水平線すれすれだから、しょうがないけど、自信を持って「見えるよ」、って言えないのがもどかしかった。

その頃使っていた元期1950版の星図では、α星の赤緯が−62度49分。与論島は北緯 27度01分だから、単純に計算しても水平線から10分ぐらい上にα星はあることになる。だから十字を形作る4つの星全部が見えていいはずなんだ、条件さえよければ。 それに大気差地平線に近い天体は、大気の屈折で浮き上がって見える、ていうやつ。標高なんかも考えたら可能性はさらに高くなる。
だから「与論島から南十字星が見えるよ」、てことを自信を持って言えるようになりたい、そんな思いで時期が来るたびに、アクルックス探索に通い続けていたんです。

(約70mmで撮影)
↓(拡大)

あれから?十年。
「与論島から南十字星が見えるよ」
自信を持って、そう言えるときが来たようです。

2008年2月29日。晴。
この時期にしては珍しく空気が澄んでいた。水平線もくっきりと見えている。
今日は期待できそう。

11時頃下見に行く。
南西の水平線近くに、1等星のカノープスが輝いている。
かつての巨大星座”アルゴ船座”から分割されてしまった、りゅうこつ座、らしんばん座、とも座、ほ座
が、所狭しとひしめき合っている。
アルゴ船の中心付近にある、ほ座のδ、χ、とりゅうこつ座のε、ι、の4つの星をむすぶと南十字によく似た形になる、通称”にせ十字”。この時期、見るのを楽しみにしている星の一つ。
これはこれで見ていて飽きないけど、目当てはやっぱり本物の南十字。
南中時刻は2時過ぎなので一旦帰宅して、あらためて出直す。

日付変わって、3月1日の午前2時を少し過ぎたころ観察地に着く。
撮影機材をセットしながら目をやると、もうすでに南十字星の例の3つの星が見えている。しかも、ほぼ南中位置に。これはやばい、時間を間違えたかも。
高度10’前後だと水平線上にあるのはせいぜい数十分程度。暗い星は1コマ撮影するのに10分以上かかる。
焦りまくりでセットしてなんとか数コマ撮影。合間に双眼鏡でアクルックスを探してみたが、かなり微妙。なんとなく見えているような。期待しすぎて幻影が見えてるのか、なんて言いながら。でもなんかいけてそうな気がした。写真に期待。


で、その写真なんですが、かすかに、それらしいものが写っている。星図とかPCソフトで確認しけど、どうやらアクルックスで間違いなさそうなんです。ただ、予想した位置よりだいぶ高いところにある。γ−α間も、星図より約26’ほど短い。

当日の南中時のアクルックスは赤緯が、−63°08’40”。撮影地は北緯27°01’22”
これだとアクルックスの高度は、−00°10’02”となって、水平線より10’ほど低いことになるが、写真では、水平線より30’前後上にあるように見える。
これがその、大気差によるものでしょうか。標高は80m前後だから、それも関係しているのかも知れない。

  • 大気差:「地球を取り巻く大気の屈折の影響で、地平線に近い天体は浮き上がって見えるのを、大気差という。 高度0°の平均的大気差は、約34’」(天文年間)
    撮影場所:北緯:27°01’22” 東経:128°25’53” 。

南十字星は、与論島では4月1日が、午前0時頃に南中(最も高くなる)します。
南中時刻は、一ヶ月で、おおよそ2時間程度早くなりますから、時期としては、その前後、3〜4ヶ月。
2月上旬(午前3時頃南中)から5月末(午後8時半頃南中)頃まででしょうか。


天気が良く、空気が良く澄んでいて、月のでない、町の灯りがほとんどない、そんな夜に(ちょっと厳しいかな?)、真南の水平線近くを探して見てください。

ケンタウルス座γ(ガンマ)星δ(デルタ)星を結んだ線の真ん中を下へ降りていくと、南十字星のγ星居ます。
倍率の低い明るい双眼鏡なら少々条件が悪くても見ることができます。